私は「CQ Ham Radio」というアマチュア無線を趣味にする方を対象にした月刊誌に「シャックのDIY入門」という連載を担当させていただきました。連載期間は2000年12月号から2003年12月号までです。ここで紹介するのは、苦労したわりに編集担当から「一般受けしないだろう」ということでお蔵入りしたものの中から、今でも役立つと思うものをWeb用に手直ししました。
私は著名な作家ではありませんから、当然書き上げた原稿にも編集者の修正が入ります。慣れないうちは一生懸命調べた項目がバッサリ割愛されていたり、結構ショックでした。でもその内、どのように手直しされるのか楽しみにもなってきました。雑誌ですから、広告が入ります。広告主との事も考慮してネタを取り上げなければならない苦労もあります。
(1)How to Rotater (2)Towerの塗装 (3)コンテスト超入門 (4)QROの検査 (5)落雷に注意 (6)落雷にあわないために
八木のような指向性のあるアンテナをあげるには同時に揃えたいものとしてローテーターがあります。ボタンを押せば東へ西へとアンテナを向けてくれます。とても便利なグッズですが、購入して取り付けたら壊れるまで使って、壊れたら新しいものと交換というケースが多いのではないでしょうか。今月は「How
to Rotator」と題してローテーターの中身をちょっとのぞいて、整備してみようと思います。
のぞいて見るのはエモテーターのFX-1200です。
(1)分解してみる
子供がおもちゃを分解するのとは訳が違います。また元どおりに組み立てて動作してくれなければ意味がありません。ですから分解する前にローターの位置とかはサインペンで印をつけることを推奨します。後述しますがローターの方位位置を分解前と組み立て後でそろえる必要があるからです。まず分解手順は写真1〜5を参考にしてください。
写真1
10mmのソケットレンチかメガネレンチを使ってボルトを緩める。スパナはボルトの頭をなめる危険があるので避けたい。この時、下側のモーターケースに対して回転部の位置をマジックで印をつけておくと組み立てる時に悩まなくてすむ。
写真2
リモートケーブルコネクタを外しておかないとベアリングケースは抜けない。また天地を逆にしておかないとベアリングが散乱してしまう。
写真3
天地を逆にしたままモーターケースをはずす。グリスが残っているので回転部のベアリングが落ちることはない。
写真4
モーターと減速ギアユニットは上側のボルト4本を取り除くとケースから取り外すことができる。モーターはDC24V13Wであった。ここまで分解して減速ギアの磨耗の状態とグリスの量をチェックして必要があれば更に分解してギアを交換する。このDCモーターは特注品でエモテーターからしか入手できない。(市販されていない。)
写真5
ベアリングケースに残っている古いグリスは灯油と歯ブラシでこすって取り除く。その後ウエスできれいに拭きあげる。
(2)組み立て
写真6
減速ギアにグリスを塗る。焼き鳥の竹串に少量のグリスをつけてはギアに塗るという作業を繰り返す。本来新しいグリスを塗る前に古いグリスを取り除いた方がよい。スプレーグリスという製品があるがモーターや配線への飛散を避けるため使用しなかった。
写真7
ベアリングケースにグリスを塗付して接着剤の役目をさせて、ベアリングを並べていくとベアリングが落下しない。
(3)ローテーターの方位位置決め
回転部ローターにボッチが付いています。回転して極限に来るとこのボッチがレバーを押します。そうするとレバーはリミットSWを押し、回転極限であると認識してモーターへの電気の供給をやめます。(写真8参照)
ローテーター自体の角度は写真のボリュームで認識しています。モーターの駆動と連動していて回転するとボリュームの抵抗値が変わるという事です。
ですから分解する前に回転部ローターとモーターケースに位置がわかるようにマジック等で印をつけるのは、組み立てる時に回転部ローターのボッチの位置(写真3参照)とボリュームの抵抗値を一致させるためです。
写真8
600Ωのボリュームの下に左右対称にリミットSWがある。その中間にレバーが位置している。回転部分のボッチでレバーを押すことでリミットSWがONして回転が止まる構造である。
OMの失敗談ほど参考になるものはないという事をよく耳にします。ここでは失敗談も交えながら、タワーの塗装について説明します。
建設時はシルバーに輝いていたタワーも年月が経つにつれ、鈍い鉛色に変化してきます。亜鉛メッキをしているとはいえ、建設時についた傷に錆が発生しますし、気温の高低差により金属は膨張収縮を繰り返し、それによってネジに緩みも生じるでしょう。あまり進行しないうちにDIYで手をいれましょう。
(1)塗料の選定
タワーは厳しい条件にさらされます。まず酸性雨です。亜鉛メッキも徐々に酸化されるでしょう。また海の近くであれば、塩分を含んだ湿った風が吹きます。夏は40゜C近くにまで上昇、冬は氷点下です。そんな条件下、塗装作業環境は自立タワーであれば15〜20mの高所作業になり、そんなに度々塗れるものではありません。ホームセンターには油性塗料や、手軽な水性塗料が揃っていますが、作業環境を考えるとすぐ塗料がはがれても困ります。またDIYでする以上、気温・湿度といった塗装条件があまりに厳しくなっても困ります。またネジの緩み防止の効果も求めたいですね。そんな理由からニッペの「ハイポン90GR シルバー」というエポキシ樹脂塗料を選びました。これはシンナーやうすめ液が揮発する事で乾燥する塗料ではありません。硬化剤で固まる塗料です。エポキシ接着剤のペンキ版です。揃えた材料は写真1に、技術資料は最後に表1として示しました。販売単位は16kgのセットですので数人で共同購入するのがいいかと思います。ホームセンターの店頭にはありませんので、注文して取り寄せになります。価格は筆者の場合で24000円でした。
(2)作業日の選定
最低気温5゜C以上湿度85%以下の条件をクリアする為に小生は翌日も晴天の4月中旬の風の弱い日を選びました。これは地域によって当然変わってきます。8エリアなら7月になるでしょう。また自立タワーやパンザマストは問題ないのですが、クランクアップタワーは塗装が完全に硬化するまで伸張できませんのでコンテストマニアの方は入賞狙いのコンテストが迫っていない事、DXを追いかけている方はペディションが近々にない事を付け加えます。
(3)塗装の作業手順
錆はワイヤーブラシで取り除きました。ディスクサンダーに取り付けたカップブラシ(写真1)は便利な様に思えたのですが、タワーの上で使うには危険過ぎるのでとりやめました。塗料液と硬化剤の分量はスケールで塗料の缶ペールの内側に印をつけて85:15の混合比(これだと容量比になるが正確には重量比で混合する)となるようにしました。塗料液は底にシルバーの元になるアルミが沈んでいるので、よく缶を振ってから開けるようにします。缶ペールにあけたら自作ミキサーで撹拌します。
一度に作成する塗料の量は1リットル程度にします。これで小生の場合(クランクアップタワー)で使い切るのに2時間かかりました。パンザマストであればもう少し多く作っても大丈夫でしょう。エポキシ塗料の場合混合してしまうとどんどん硬化が進行する為、刷毛が次第に重くなってきます。その為にも作り過ぎないことが大切です。ただ硬化が進行してどうしようもない場合はラッカーシンナーを少し入れてください。(アマチュア的には十分かと思います)タワーに上る前には今一度忘れ物はないか深呼吸して落ち着いて作業にかかってください(写真3) 筆者はタワーのスライド部分の丸パイプのみ塗装しました。(写真4)トラス部分は塗りにくく時間がかかる為、塗料の硬化時間と体力、集中力の限界から今回塗装しておりません。
(4)失敗談
タワーの下には塗料をたらした時のために、古新聞を敷いていました。ところがタワーの頂部は高いもの、たれたペンキは放物線を描いて思わぬほど広範囲に飛散しました。住居の1階の屋根、カーポートの屋根が部分的にシルバーになってしまいました。付着した塗料を拭き取ろうとラッカーシンナーを布に染み込ませてこすったら、カーポートのポリカーボネートの屋根は溶けてしまいました。1階屋根は後日DIYで屋根用塗料を塗ることでXYLの怒りを静めました。XYLいわく「もう2度とタワーにペンキを塗らないでね。!」このHPをご覧になって塗装をお考えのOM諸氏はタワーの半径2mはきちんと養生してからのぼってください。
そして塗装してから6日目に珍DX局が入感、ちゅうちょしたもののタワーを伸張させました。ハイポンの技術資料にも記載がありますが、スライド部分のエポキシはこすれて剥がれてしまいました。10日間以上硬化期間をとったら剥がれなかったかとも考えましたが、メッキでもこすれることで薄くなるのを塗料で防ごうという考え自体が甘いのかもしれません。パンザマストや自立タワーではその心配がないので高所恐怖症でない方はご検討ください。
写真1
1斗缶が塗料液 上の小さい缶が硬化剤 塗料を混ぜる缶ペールと刷毛(100円ショップの製品は毛の数が少ないのでタワーの上で塗りにくく後悔する 刷毛の幅の割に毛の多い製品を購入するのがポイント) 塗料液と硬化剤を撹拌する羽根(缶ペールに入る大きさの金属性の平板に穴をあけ、M4程度の寸切りボルトをナット締めして自作)とドリル ケレン用のカップブラシとワイヤーブラシ(100円ショップの3本100円のブラシはワイヤーの本数が少ないのでNG) スケールは塗料の分量を測る為に使用
写真2
撹拌用のミキサーは市販されているが、1斗缶用しかなく2〜3万円もする。かといって棒でかきまわしただけではむらになって硬化しないことがある。撹拌用の羽根は竹とんぼに似せて自作した。正しい工具の使い方ではないが、ロングサイズの6角棒レンチをドリルで回転させても何とかなる。
写真3
缶ペールは番線をS字に曲げてフックを作ってタワーのトラスに引っ掛ける様にすることで、塗料缶を持たなくて良くなる。万一のタワーの落下防止に丸パイプを挟み込む。
写真4
ヘルメットにU字掛け安全帯は勿論だが、もう捨てても惜しくない服装で作業すること。ペンキが落下しない様に気をつけるより、自分が落下しない様に気をつけて。安全第一。
(5)塗料の参考資料(表1)
* 一般名称 | ポリアミド硬化形エポキシアルミニウム塗料 | ||||||||||||||
*特 徴 | (1)亜鉛メッキ面に対して密着性良好です | ||||||||||||||
(2)耐水、耐薬品性および耐久性にすぐれ、メンテナンスの長期化がはかれます | |||||||||||||||
(3)1回塗りでの仕上げも可能です | |||||||||||||||
*荷 姿 | 16kgセット (塗料液:硬化剤=13.6kg:2.4kg) | ||||||||||||||
* 塗装基準 | 下地調整:被塗面に付着したほこり、その他の異物を清掃し、清浄ケレンしてください。 | ||||||||||||||
調 合:2液形のため「塗料液:硬化剤=85:15(重量比)」の混合比により混合し、十分撹拌してください。 | |||||||||||||||
* シンナー | ハイポンエポキシシンナー | ||||||||||||||
5C | 20C | 30C | |||||||||||||
指触 乾燥 | 1,5時間 | 1時間 | 30分 | ||||||||||||
半硬化乾燥 | 24時間 | 12時間 | 8時間 | ||||||||||||
塗り重ね乾燥 | 24時間以上 | 16時間以上 | 16時間以上 | ||||||||||||
10日以内 | 7日以内 | 7日以内 | |||||||||||||
* 注意事項 | (1)5C以下の気温が連続する場合、湿度85%以上の場合は施工しないでください。 | ||||||||||||||
(2)塗装後短期の内に、降雨や結露など水分の影響を受けると白化することがあり、このような白化面にそのまま塗り重ねると層間付着性が悪く、剥離するおそれがありますので、ペーパー掛け、シンナー拭きなどで白化した層を除去してください。 | |||||||||||||||
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アマチュア無線局を開設して日曜日などに受信をしていると「CQコンテスト こちらはJA1QRS…・・」をCQを連呼する局に出会った事は誰しも経験した事だと思います。
コンテストってなんでしょう。ミス○○コンテストなら解りやすいんでしょうけれど、無線でコンテスト?と最初は頭をかしげたくなるでしょう。
コンテストとは
超ビギナー向けに説明します。
@ 限られた時間内にA決められたルールに従ってBどれだけ多くの局と交信できるか、を競う試合みたいなものです。
私の住んでいる埼玉県、日本アマチュア無線連盟埼玉県支部の主催するコンテストを1例にして説明しましょう。ルールの解説は、http://www.jarl.com/saitama/contest/にあります。まず「限られた時間」というのは「成人の日」の午前9時から午後3時までです。
次に「決められたルール」を説明します。まず参加部門です。埼玉県内の局は県内局として、その他の県からの参加局は県外局としての参加になります。但し、他県の局であっても移動局であれば埼玉県内に移動してきて県内局として参加する事が可能です。
参加部門に個人シングルバンドと個人マルチバンド(クラブを対象としたマルチOPもあります)があります。
交信するとコンテストナンバーを交換します。埼玉コンテストの場合、RS(T)レポートに都道府県ナンバー(県外局)または市町村ナンバー(県内局)を互いに送信します。例えば東京都のJA1QRS局なら「59(9)10」埼玉県坂戸市のJA4QQJ/1局なら「59(9)1339」を送信します。RS(T)レポートですから59(9)とばかりは限りません。55(9)を送出する局だっています。59(9)を皆さんが送出する理由は効率の問題だと思います。相手局は59(9)の後につづく番号にだけ集中していればいいわけですから。
マルチってなんでしょう。これはいろいろな地方、つまり異なる都道府県ナンバー、または市町村ナンバーを指します。「さいたま市」の局ばかり3局と交信してもマルチの数としては1となります。。けれど「さいたま市」「所沢市」「川越市」の局とそれぞれ交信できればマルチの数は3となります。
参加するなら入賞してみたい
どうせ参加するなら入賞を目指したものです。
手始めは表1に例をあげたようなローカルコンテストから始めましょう。最初は自分のよく交信しているバンドに絞ってシングルバンドがいいでしょう。
参加部門をよく研究して比較的入賞しやすいバンドと部門を選択します。つまり7MHz辺りですと強豪がずらりと待ち構えています。U・VHFなら山に登れば断然有利になります。さらにあなたが電信も出来る資格をもっていれば更に入賞に近づきます。U・VHFでは電信の局は数えるほどしかいません。競争相手が少ないとそれだけチャンスが多いという事になります。ただあまりに相手がいなくてたいくつしてしまうかも。
あなたが電信のできる資格をお持ちなら、ちょっと裏技を伝授しましょう。(こんなHPで公表すれば裏技でなくなってしまいますが)U・VHFではクラブ局を捕まえて「電信でお願いできませんか?」とたのんでみるのです。埼玉コンテストでは電話〜電話の交信の得点は1点ですが、電信〜電信の交信は2点の得点になります。たいていの場合電信で交信した方が得点が高い場合が多いようです。クラブ局でU・VHFを担当している方は4アマであったりすることが多いのですがクラブ局なら必ず電信マンがいるはずです。すぐというわけにいかないまでも電信で交信は可能でしょう。ですから電信の周波数で「CQ TEST…・」を送信するよりも局数は稼げるかもしれません。
もうひとつ、あまり無線局のいない穴場へ移動するのもいいでしょう。JCC/JCGをアワードハントしている方にとっては珍市・珍郡はコンテストに参加していなくてもQSLが欲しいわけです。ですからそういう所で運用すればパイルアップになる可能性が大でしょう。
コンテストログの書き方
さていくら多くの局と交信してもコンテストログとサマリーシートを期限内に提出しないと入賞はありえません。
簡単なようで間違いが多いのがコンテストログの記入です。電子ログで提出される方に間違いが多いと集計担当者が言われていました。
まず、「マルチ」です。これはマルチの番号を記入します。表1の埼玉コンテストですと、東京の局と交信をしたのなら「10」神奈川なら「11」川越市なら「1302」と記入します。これを時間順に上から記入します。シングルバンドなら間違うことはないのですが、マルチバンドで参加した場合は、それぞれのバンドでコンテストログを作成しなければいけません。なかに1枚のコンテストログの中に複数のバンドを記入される方がおられるようです。気をつけましょう。
筆者が500Wの免許をいただいたころは、免許情報について現在のようにインターネットでサッサッと検索して情報を仕入れるということは出来ませんでした。ですから近所のOMさんに「どうでしたか?」とお尋ねするのが一番信頼性があったわけです。もっとも現在でもある意味泥臭い部分って皆さん非公開にされていますよね。よほど親しい間柄になれば「落成検査の途中でリニアアンプから煙が出た」といったトラブルの情報も頂けるのでしょうが…・。
今月は1アマ予備軍の方を対象にQROする場合の申請方法、落成検査のDIYです。これだけは誰かに丸投げするというわけにはいきません。説明のなかで「落成検査」という表現であらわしているのは、総務省の検査の総称と理解してください。ですから変更した時の検査も含めます。
(1)落成検査で何を調べるか?
ほとんどの局がメーカー製のトランシーバーにリニアアンプとなった現在、もっとも重要なものは、電波障害です。
さて所定の様式で申請をすると開局なら「予備免許状」、変更なら「無線局変更許可通知書」に「アマチュア局検査事前点検表No1〜3」「電波障害調査のお願い」が同封されてきます。
「電波障害調査のお願い」の文書を近所に配布して試験電波を送信して免許となる全バンドについて調査します。以前は500W免許で半径100m以内にある家に障害がないことを確認しておかなければなりませんでした。軒数は6軒でした。最近はこの半径100m・6軒というたががなくなっています。これについて関東総合通信局に問い合わせてみました。回答は「可能性のある家についてもれなく調査を実施してください。」ということでした。これは実際に落成検査をする段階で技官が周囲の状況を判断して電波障害の調査を実施した軒数が少ないと判断した場合に周囲の家にお邪魔して障害の有無を調べるという事です。逆をいえば十分に調査を実施していると判断されれば送信機の検査と自宅の電波障害の検査だけでOKということでしょうか.1KWが許可される様になってからかなり離れた家からでも電波障害が出るという現象がみられるようになったためだそうです。
もっとも田舎で周囲に1軒もないといわれる方は電波障害の調査をする必要はありません。
これは申請をして予備免許状が届いてから調査、対策をするという動きになります。予備免許もなしに試験電波を出して、電波障害の調査をする事はりっぱな電波法違反です。
(2)実際の検査
落成検査には総務省から、事務官・技官の2名(技官2名という場合もあり)が来られます。それでまず無線局の周囲の家庭に障害がないことを書面で確認されます。それからアンテナを調べられます。当然申請した設備の検査ですからアンテナがないと検査は合格しません。例えば、3.7MHzのアンテナは3.5MHzの物を調整して使うという場合でも、検査の中で3.5MHzが終了してから3.7MHzに調整して検査を受けます。
なお1.8MHzと1.9MHzの扱いについては検査に来られた技官の裁量に任せているとかで明確な回答はいただけていません。つまり1.8MHzに同調させたANTと1.9MHzの同調させたANTの両方が必要か否かということです。1.9MHzに同調させたANTのみで1.8MHzも許可になるか?(免許状は1.9MHzの周波数のみ記載です)この件は次回変更検査を受ける必要が生じたら申請してみます。現在は1.9MHzは固定局に関して免許がありません。
それからアンテナの周囲を調べられます。これは電磁波の影響(電界強度)を考慮してあるかということです。筆者の家では庭にバーチカルが建ててありますが、柵は設置していません。「送信中は人が近くに立ち入らない事を確認しています。」という条件です。
もうひとつ、この落成検査は資格を持った民間の認定点検業者が代行することも可能です。平成14年末時点で70弱の業者が登録されています。けれどこれらのほとんどが自局の設備の点検を行うためだけに資格をとっているそうです。ですからアマチュア局の落成検査は2〜3の業者に限定されるそうです。日曜日しか検査を受けられない方には朗報でしょう。但し費用は若干高めにならざるをえないようです。
(3)落成検査の必要な変更
ではどういった時に落成検査が必要なのでしょう。新しく500Wあるいは1KWの免許を申請した時は当然ですが、トランシーバーを変更した時はどうなのでしょう。もちろん免許状の記載事項に変更がない場合です。一見、指定事項に変更がないので申請だけでOKになりそうですが、この場合は落成検査が必要になります。これは電波法令集をいくら読んでも書いてありません。
次に同様に指定事項に変更がない範囲でリニアアンプを変更した場合はどうなるのでしょう。この場合は申請のみで許可になります。つまり変更手数料は切手代のみでいいわけです。それではリニアアンプを追加した場合はどうなるのでしょう。
またPSK-31やRTTYのように免許状に変更が生じた場合はどうなるのでしょう。エキサイターに技術適合証明機種を使っているような場合は、付加装置を付け加えた送信機の系統図を添付して総務省に申請をすれば許可になると聞いています。これも免許を有していないので正確な事は申せません。
(4)落成検査風景
話を戻しましょう。近所に電波障害がないという調査書とアンテナのチェックが終わったら、今度は実際に送信試験をします。電信なら「VVVVV…・DE7M4…」電話なら「本日は青天なり、ただいま試験電波の…・」です。電波障害がないかどうかは、自宅のTVで確認されます。事務官がシャックに立ち会われ、技官はTVの前におられます。その状態で、変更申請したバンドを順番に送信していきます。3.5MHzで試験電波を送信している間、技官はTVのチャンネルを順に切り換えて障害の有無を調べられます。事務官はリニアアンプのメーターから出力電力・プレート電流(コレクタ電流)を調べられます。メーターの指示値を読む必要からモードはSSBよりCWがいいでしょう。エレキーであればスピードを一番遅くします。ここでバードのPWR計があったほうがいいとかよく聞く話ですが、ないから検査が厳しくなるかということはないでしょう。ちなみに小生は所有していません。
そうして全バンド、それに対応してTVのチャンネルに障害がなければ落成検査は一段落です。係官によっては、「交信をしてみてください」とおっしゃられる方もおられます。
次にご近所で1軒調査をされる場合があります。筆者の場合、3回目の落成(変更)検査では多少自宅のTVと電話に障害がみられるということで隣の家の状況を調査されました。自宅に多少の障害があっても隣の家に障害がなければ免許は許可になります。落成検査の日程が決まった時点で総務省の係官がお邪魔するかもしれない旨、一応ご近所にはお断りを入れておくに越したことはありません。
後は諸注意をいただいて終了です。免許状は記入されて持参されていますので、その場で手渡されます。
(5)1KWリニアで500W申請する方法
現在市販されているリニアアンプはほとんどが1KW出力です。でも1KW出力で発生する電波障害対策をする自身のない方に1KWリニアで500W申請する方法を説明します。
リニアアンプにはALCのレベル調整がついています。これはエキサイターの出力が大きくなりすぎた場合に、AMPからの出力が許容範囲を逸脱するのを防止するためです。リニアアンプからエキサイター(トランシーバー)へALC信号を入れることでエキサイターの出力をリニアアンプの許容範囲に押さえるわけです。
これをうまく利用して、1KWリニアアンプであっても500W出力しか出ないようにすることは可能です。身近なところでは3アマの方が100Wトランシーバーを使って50W免許を申請するのと似ています。(半固定VRを接着剤で固めるという事はないようです。この辺りは自己責任に任せていただけるのでしょう。)
モールス試験が簡単になってQROされる方も多いようです。QROすれば電波障害は必ずついてまわると考えてください。電波障害対策で最も重要なのは技術ではありません。いかに対人折衝が根気よく出来るかという人間性だと思います。
昨年 私は誰でも経験しようとしてもなかなかできない事を経験する機会に恵まれました。何事もプラスに考えないと人生楽しめません。それは何かと申しますと、「落雷」です。
(1)落雷の予感
その日はウィークディーながら休日でした。床屋から出た小生はにわかに空模様が怪しくなってきたので自宅に帰り、タワーをクランクダウンさせました。いつも目一杯下げることはしないで、約半分下げて止めています。伸長させて17mHですので約9mほどの高さです。とはいえ、マストが5mありますから給電点までは14mあります。更に最高点に載せているのがVDPですので、エレメントの先端までは16mHでしょう。
アンテナを下げて再び所用を片付けに出かけました。出かけると急に雨足が強くなり、落雷が始まりました。車の中で聞く限りそんなに近くで落雷があったとは思えません。ただあまりに雨足が強くなったので、用事を片付けるのをあきらめて自宅に帰りました。
車庫に入るなり、呆然としてしまいました。(写真1・2)タワーに落雷があったようです。これでは他の家電製品も全滅だろうと覚悟を決めて家に入りました。電気製品はすべて電源が切れた状態です。オートブレーカが落ちていました。入れ直すとまた落ちます。分岐ブレーカーを一旦すべて切りました。それから分岐ブレーカーを1つづつ入れてみます。するとリニアアンプの回路を入れると、オートブレーカーが落ちます。リニアアンプの回路以外はすべてOKでした。ほっと胸をなでおろしました。全滅でなかった。やれやれ。
写真1
CQ誌でも紹介したクランクアップタワーのワイヤー検知機。落雷のショックでプラBOXの蓋がはじけ飛んでしまっている。
写真2
ワイヤー検知機の心臓部。オムロンのシーケンサCPM1Aの基板は2mほど吹き飛んでしまっていた。コイルは焼け、コネクターも黒くこげて落雷のもの凄さを語っている。
(2)シャックの状態
シャックに入ると焦げ臭いにおいが充満していました。リニアをチェックしました。(写真3・4)
写真3
AC200Vのコンセントプラグ。後ろの蓋がはじけ飛んでしまっている。ただ端子の様子は正常である。
写真4
リニアの端子台。端子が溶けて樹脂の表面に溶着してしまっている。見た目には焦げているだけであるが、テスターで抵抗を測定すると端子と樹脂間で短絡している。そのため分岐ブレーカーを入れるとオートブレーカーまで落ちてしまう。
パケット(チョッと昔は無線でデータ通信をしていた。DX情報を仕入れるのに便利)に繋ぎっぱなしだった古いノートPCはバッテリーLOWのエラーが出ていました。ひとまずOFFにしました。再度立ち上げようとすると動きません。
安定化電源のSWを入れてもONしません。ローテーターのコントローラーも駄目です。
こういう場合はまずヒューズのチェックです。開けてみるとすべてヒューズが爆発(切れたというなまやさしいものではない)していました。近所のホームセンターでヒューズを購入して交換してみました。安定化電源はSWが入りました。ローテーターのコントローラーはヒューズの交換だけでは駄目でした。ノートPCは電源から出力がありません。DC14Vの供給だったのでそのまま安定化電源から13.8Vをつなぐと生返りました。
安定化電源が直ったのでRIGのSWを入れて受信してみました。大丈夫のようです。送信してみました。ワークバンドでオートチューナーのマッチングスピードが遅いようです。ひとまずRIGも大事をとって修理に出したほうがよさそうです。
修理依頼のTELをしようと受話器を持つと発信音が聞こえません。TEL回線もやられたようです。そのためNTTにTELを入れようとするのですが、回線が込み合っていてつながりません。翌日にやっとNTTに連絡がとれTEL回線が復旧しました。修理に来たNTTの担当者の話ですとケーブルが焼け焦げていたようです。保安器から先がNTTの無償修理範囲で、屋内はユーザーが修理代を負担しなければならないそうです。
RIGを修理に出してから、後日別のRIGを引っ張り出してON AIRしようとすると、10MHzでANTのオートチューナーの同調が出来ません。18MHzも様子がおかしと判明しました。
どうも修理に出したRIGは壊れていなかった様です。チューナーの動作がおかしい原因はANTにあるようです。双眼鏡でANTを見ました。バランからエレメントへの導線が片側ありません。これではオートチューナーの同調がとれなくて当たり前です。
(3)保険での対応
幸いなことに家財保険に加入していました。めったに保険の約款など読まないのですが、この時ばかりは熟読しました。保険会社にも落雷の報告をして書類を送っていただく様に手配しました。
保険での処理は、とにかくメーカーに「落雷にあった旨、修理をお願いします」と現品を送ることでした。ノートPCは電源だけでしたので、修理されて戻ってきました。リニアアンプは「落雷で故障ヶ所多枝に渡るため修理不可」という理由書が添付されて戻ってきました。
もうひとつ、アマチュアならではの問題があります。自作品は保険の対象とならないようです。つまり写真1で示したような物は保険金が下りないということです。ただパーツとしてメーカーが落雷による故障と認めればパーツ代は補償されるようです。ですからクランクアップタワーのワイヤー検知機に使ってあったオムロンのCPM1Aはメーカーに返送して理由書をもらいました。けれどコンデンサだとか、抵抗だとかいった細かい部品は泣き寝入りするしかないのでしょうね。
またアンテナはそんなに簡単に取り外しの出来るものではありません。まして一人で出来る範囲は限られています。思い切って業者に依頼するつもりで見積もりをお願いしました。保険会社には素人には危険で出来ない為の説明を見積書に書き加えました。
(4)近所の状態
大きな声ではいえませんが、ご近所でも3軒ほど湯沸し器やTVの故障があったようです。あくまでも推測の域を出ませんが、当局への落雷が原因しているかもしれません。タワーから地面に抜けた落雷の電流は周囲の地電圧を上昇させます。これがACラインのアースから回り込んで家電製品を壊してしまったのではないかと想像します。
(5)自然の脅威
FTIの広告にあります。「如何なるDX’erも自然の脅威には勝てない…」と。まさにその通りだと思います。無線をしない時はANTは下げておき、同軸のコネクターは外しておく。落ちた時の被害を最小限にとどめることは普段の努力と注意で可能でしょう。けれど落ちない様にするのは自然を相手に無理だと思うのですが。
とある方は申します。「無線をしなければいいんですよ。」確かにそれも一利ありますが、それでも無線をしたいんですよね。
さて、先ほど落雷の脅威を書き綴りしました。ではどうすれば被害を最小限にとどめられるのでしょう。
(1)落雷の電流はどこを流れる?
下の写真を見てください。雷電流の流れた痕跡です。
コイルのカバーははじけとんだ | アルミパイプに穴があいた | 給電線は溶けてなくなった |
見ての通りで、Vダイポールの片側へ落雷し、電流は写真からもわかるようにエレメント→バラン→タワーへと流れ、タワーの下に取り付けてあった自作のワイヤー検知器(前項、写真1・2参照)を破壊してアースに抜けたようです。アースに抜けた電流はアースの電位を上昇させます。
AC100Vラインは片側がアースになっています。落雷により上昇した地電圧はアースラインから家電製品に流れ、家電製品を破壊するのではないか想像します。これによりアンテナチューナーは電源部が最も壊れていました。またローテーターのコントローラーはSWが完全にお馬鹿になって、基板も抹殺されました。さらに小生のタワーに取り付けてあったワイヤー検知器と同じコンセントにさしていた家電製品はすべて壊れました。これは近所の2〜3件で電気製品が壊れた事実から推測して可能性として否定できないでしょう。(ただ筆者の家ではワイヤー検知器同じコンセントにぶらさがっていた家電製品以外は壊れませんでした。というのも40Aのオートブレーカーが落ちて電気を遮断したからだと考えています。) つまりコンセントに差し込んでいなければたいていAC100Vのアースからくる雷電流は防ぐことが出来ると想像がつきます。しかし最近の家電製品はタイマーが内蔵されていたりでおいそれとコンセントのプラグを抜くというわけにもいかないようです。またSWを切ってあれば大丈夫でないかとお考えの方もおられるかと思いますが、流れる電流値は想像を絶します。SWを破壊して中まで電流は流れて基板を壊してしまいます。
(2)高いと落ちる?
よく聞く話です。電流は最短距離を流れますから、地上部のアースに一番近い、言い換えると高いところから流れます。つまりアマチュアのタワーは格好の導体であるわけです。
もうひとつよく聞く話で高圧送電線の下は落雷がないという事です。どういう事かというと高圧送電線の一番上に地線(アース線)が張ってあります。つまり雷はこの地線に落ちる為にほかの場所には落ちる可能性が低いというわけです。それを頭において家の周囲の街中のコン柱の6600Vの送電線を観察してみましょう。一番上にはやはり地線が張られています。電位的にはこの地線が地面(GND)というわけです。ところが6600V→単線3相(100V・単相200V)に降圧されて、単線3相のみで送電される様になると地線はありません。電力会社に問い合わせたところ、単線3相の3本の電線の中で一番上に張られている電線がアースに落ちているという事です。
アマチュア無線家としては雷の時にはこの地線より低い高さにアンテナを下げれば落雷にあう確率が下がるのではないかと思います。ですから、自立タワーの場合のアンテナエレベーターやクランクアップタワーは雷対策という意味では効果があると思います。では高層マンションとかにお住まいの方はどうするのかという問題があります。
(3)アパマンハムのアンテナの場合
高層ビルのアパマンハムは一戸建てのハムに比べて非常に高い位置にアンテナがあります。ですから一戸建てのハムよりも落雷の危険度は高い?のでしょうか。
確かに、アンテナのGND側がきちんとアースに落ちていれば当然先ほどの電柱のアース線よりはアンテナが高いですから落雷の危険率は高いといえます。けれどアースから完全に絶縁(浮いた)された状態にアンテナをしておけば確率は下がるでしょう。
アパマンハムのなかにはアンテナチューナー(ATU)にロングワイヤーの方が多いかと思います。アースを切り離しておく、つまりアンテナのコネクタを無線機から抜いてベランダに出しておくことが被害を最小限に留める方法ではと考えます。ただATUのラジアル側は建物と高周波的に容量結合していると考えなければなりません。
ATUの電源がACラインに接続されたままであれば当然アンテナはATUを介してGNDに落ちていると考えなければなりません。またアンテナ線がRIGに接続されたままで、RIGの電源もACラインに接続されたままですと一層危険ですし、万一の場合の被害も相当なものになるでしょう。
もち論、これは一戸建てハムにも共通していえることです。
(4)雷雲の様子
関東近県にお住まいの方しか活用できないかと思いますが、東京電力で雷雲の様子をリアルタイムにインターネット上に公開しています。http://www0.thunder.ne.jp/cgi-bin/main.にアクセスして見てください
こういった情報を活用するのもひとつの選択肢かと考えます。ただ見ている途中に落雷にあってPCを壊したという事のないようにお願いします。